秋の心地よい晴天の午後、スタッフとご参加の皆様の協力によって入場手続きがスムーズに行われ、スタッフによる諸注意の後、ほぼ時間通りに講座が開始されました。
講師の三善和彦氏からはまず、「映像の演出において、ヒトの感覚の法則性を利用する」ことの重要性、またそれによって「映像は人類の共通言語としての普遍性を獲得できる」という前提を踏まえ、「画面上の右左の位置や進行方向が観客に与える感覚の法則」を理解し演出することの大切さが解説されました。
しかしながら、演出について論じられた書物ではこの「右左の感覚」について、日本で書かれたものと海外で書かれたもので全く逆に説明されている点が指摘され、また実際の映画やアニメの作品でも違いがあり、どちらが正しいのか三善氏が長年行ってきた右左の感覚についてのアンケート調査の結果が紹介されました。(詳細については三善氏のYouTubeチャンネル、狢チャンネル https://www.youtube.com/@user-qo4dy2ls4g をご参照ください)
アンケートから導き出された答えは、「右への動きと左への動きで感じ方に差はなく、ヒトの感覚の法則性とは関係がない」、つまり左右の差は文化的、歴史的、社会的な慣習によって変わる、という事でした。
その後、古文書や海外の文献に於ける舞台演劇や絵画の例、また儀礼上の慣習や書字方向の影響、また国際的な文化交流による変化など広範囲に渡る研究結果を分かりやすく解説して頂きました。もちろん映画、アニメ、漫画にいたる実作品の例も多数解説されました。そして、左を上位とする「尚左文化」がいかに日本文化にとって重要なものであるかが示されました。
最後に、「右から左」の動きを優位としているのは今では日本だけであり、現在はデジタルデバイスの影響によって若い世代ではだんだんとその感覚も変わってきていること、それを受けて、みなさんはどう判断していきますか?という問いと共に講座は終了しました。終了後は撤収時間まで交流会が行われ、ご参加の皆さんと三善氏、AniLecスタッフが自由に歓談する場が設けられました。三善氏への質問はもちろんのこと、スタッフへの相談や情報交換などで盛り上がりました。
三善氏ご自身のYouTubeチャンネルよりもずっと進んだ内容を、コンパクトにまとめてわかりやすく解説して頂きましたので、参加された皆様はだいぶ得をされたのではないかと思います。講師の三善和彦氏、ご来場のみなさま、ありがとうございました。