2021年8月3日火曜日

『絵コンテを切る‼︎』第7回

 ども、博多です。


前回の続きです。


頭の中で描いた「完全なる理想形」の映像を絵コンテに落とし込む時には、ある程度「現場のキャパシティ」を想定しないといけません。

ずっと動きっぱなしというわけにはいかないし、止め絵だけのフィルムなんてのもあり得ません。

やはりメリハリが大事です。


となると、前回定義した「山場」をどこに設定するか肝(キモ)になってきます。

大抵の場合、シナリオには「起」「承」「転」「結」があります。

その中で「起」と「転」の部分が「山場」になることが多いです。


「起」はつかみの部分。

最初に思い切り動かしておいて、「動いているフィルム」を印象付ける。

スポーツアニメなどで、私がよく使う手です。


「転」は話が盛り上がって来て、ラストのオチつまり「結」の直前です。

ラストに向けてお膳立てが揃って、あとはコトをなすだけ、みたいな状況。

「話は終わった。さあ、おっ始めようか」となって、あとはもうそのアクションを起こすだけ、みたいなところでド派手に動かす。

それこそ文字通りの「山場」でもあります。



そのコンテでの「山場」が決まったら、あとはそこに向かって徐々に盛り上げていきます。

これはシナリオの話ではなくて、画面的なテンションという意味です。


私は「平場」という言い方をするんですが、会話が続くだけだったり、何気ない日常描写、特に大きなアクションもなく、1カットあたりの秒数が長い状況が続くようなシーン……つまり「山場」ではないところで「山場」以外の尺を埋めていくわけですが、そこでも徐々にテンションを上げていき、「山場」に入る準備をしておくわけです。


私は、この「平場」と「山場」の割合は「73」から「82」くらいが妥当と考えます。

印象としては「基本平場で少しだけ山場がある」。

もちろん、話にもよりますけど。


なぜ「山場はちょっとだけ」がいいかと言うと、「山場」が多いと疲れるからです。

「緊張疲れ」というか、驚きが薄くなるんですよね。


「山場」「平場」という言葉でいうなら、ずっと続く「山場」はもう山場ではなく、単に高いところにある「平場」なんです。

「山場」の高さ(この場合、画面のテンション)を強調するためには、そうじゃない低いところをたっぷり用意しないといけない、ということです。


これを見誤ると「ただひたすらテンションが高い、何がいいたいのか分からないフィルム」が出来上がります。



前回も言いましたが、「山場」は視聴者の情報処置の効率が落ちるところです。

なので、「平場」が話の聞かせどころになります。

設定やストーリーが複雑な作品ほど「平場」が重要と言えます。


で、この「平場」をいかに飽きさせず見せ続けられるか、がコンテマンの腕の見せどころでもあるわけです。


派手なシーンに目が行きがちですが、本当に上手いコンテとは平場を平場と感じさせない、さりげないアングル選びやカット割りの技術が優れているのです。



「山場」の話、もうちょっと続きます。


では、また。



博多

2021年7月20日火曜日

『絵コンテを切る‼︎』第6回

ども、博多です。

前回は、頭の中で「完全なる理想形」の映像を描く、という話をしました。
そして、その映像をそのまま絵コンテに出来るわけではない、という話も。

この「そのまま絵コンテに出来ない」という言葉にはいくつかの意味が含まれます。

まずは、頭の中で描かれた映像は、映像であって映像ではない、ということです。
思い描いた映像の中では、あちらこちらを自在に見回せますし、何なら同じ時間に同時にいくつものカメラを構えている状態……マルチアングルで見ることも出来ます。
イメージとしては、「シナリオに描かれた物語が繰り広げられているVR空間に、自分が複数人でカメラマンとして入り込んでいる」といった感じでしょうか。
つまり、二次元単一画面の状態ではないのです。

次に、上記のような状態なので、カメラアングルが決まってなかったり、カット割りが決まっていません。
「このセリフまではこのキャラがこのアングルで喋って」とか「このアクションをきっかけにカメラをこっちに振る」みたいなことがまだ混沌としてるということです。
もちろん、始めから「決めカット」を何カットかは想定していると思います。
「この瞬間の、このセリフは、絶対にコレ!」的なカットは、シナリオを読んだ時に思いつくはずです。
しかし、それ以外のカットはまだぼんやりしていることでしょう。
その辺は実際に、絵コンテを切りながら、決め込んでいくことになります。
逆に、最初から全てのカットを決め込めていれば、コンテを切る作業が驚くほどサクサク進みます。

最後に、全ての動きがフルアニメーション、美麗で作画崩れ皆無の状態ですので、これを完全再現しようと思うと作画枚数がトンでもないことになるのと、激ウマアニメーターが山のように必要になります。
そんな現場、あったら教えてください。
そして、そこで私も演出やらせてください。

ところで、
この「現場のキャパシティを想定する」ことが商業アニメの絵コンテでは重要です。
前回も書きましたが、「低カロリーで見栄えの良いフィルム」を現場(制作)は求めています。

じゃ、「低カロリー」だからといって「止め絵」ばかりの映像でいいのか?
動かないアニメはアニメじゃありません。
アニメは動いてこそ、なんぼです。
それに現場も紙芝居アニメを作りたいわけじゃありません。
低カロリーといいつつも、ちゃんと動いて見えるフィルムが欲しいわけで。

動かすべき時に、適度なカロリーで効果的に動かす。

これです。
カロリーは必要だけど最小限、動かないところは極力枚数を削る。
これを意識しないと、無駄に高カロリーで、制作的に大変なだけのフィルムになってしまいます。
「ここ、こんなに動く必要ある?」的な。
もちろん、動いたら動いたで、見てる方は嬉しいんですけどね。


さて、
ここでは作画的に気合を入れて動かすところ、特に画面の変化率が激しいところを「山場」と呼称します。
あえて断りを入れるのは、「山場」という言葉には色々な解釈がある上、本来の意味から違う意味で使用するからです。
「制作的に高カロリーな場面」と仮定して使用します。


この「山場」、画面の変化が激しく、見ている人は興奮・高揚するので「見栄えがいい」です。
アニメーションのダイナミズムであり、人々を魅了するポイントとも言えます。

ただし、これは諸刃の剣でもあります。

なぜなら、感情が昂り、目が画面に釘付けになる一方で、耳からの情報処理が疎かになりがちだからです。
激しい画面変化を目で追いながら、耳からの情報を整理出来るほど、人間は器用じゃありません。

つまり、重要なセリフや視聴者に考えさせるような重たいシーンには向かないのです。
「いやいや。私は、耳からも目からも同時に情報を処理できるよ」という向きもあるでしょう。
あなたはそうかもしれません。
でも、普通の人は違います。

「自分はどうか」で判断せずに、「特に熱心に観ているわけでもない、一般の視聴者はどうか」で考えましょう。
なぜなら、その「絵コンテ=フィルム」はそういう人たちに向けて作っているのですから。


長くなってきたので、次回に続けます。

では、また。


博多

2021年7月8日木曜日

『絵コンテを切る!!』第5回

ども、博多です。

前回は、コンテ打ちまでにシナリオを読み込みましょう、という話をしました。


シナリオが頭に入ったら、何回も反芻してみます。

そうすると、頭の中に映像が浮かんでくるはずです。


実はシナリオを初見で読んだ時からすでに、ある程度画面を頭に思い描きながら読んでいるのですが、それはあくまでもその場面のイメージ……つまりは静止画、またはワンカットだけの映像であって、1本の繋がった映像ではないはずです。

この断片化されたイメージを、頭の中で繰り返し再生しながら、映像として組み立てていく作業を行っていきます。


ちなみに、この作業は完全に頭の中で行なっている作業なので、目に見える形ではありません。

どこまで出来たら終わり、という明確な線引きはないですし、自分の中で「見えた!」と思えば、そこで完了です。

もちろん、その作業中に絵コンテを切り始めることもあると思います。

切り始めても、常に頭の中で上映し続けましょう。

何回も何回も上映して、脳裏に焼き付けておきます。


そして、

そこで出来上がった映像は「完全なる理想形」の映像のはずです。

潤沢な作画枚数により滑らかに動き、作画の崩れも一切ない。

キャラ表よりもちょっとゴージャスに「盛った」絵かもしれません。

さらに美麗な背景、思った通りのところにジャストなタイミングで自在に動き回るカメラ。

まるで「夢のような」映像が出来上がったことでしょう。


これが「目標」になります。

アウトプットする際に、その映像をどれだけ再現出来るか、というのが絵コンテの作業と言ってもいいです。

ここでは敢えて「どれだけ”忠実に”再現出来るか」という言葉は使いません。※



さて、

ここから様々な「引き出し」が必要になります。

「経験値」と言い換えてもいいでしょう。


この映像を、ちゃんと商業アニメの制作体制で再現しようとした時に、どのような手法を使えば最適なのか。

作画のカロリーはどのくらいか。その作品のスタッフで消化できそうか。

定尺の中で収まりそうか。


残念ながら、現在の日本の商業アニメの現場はかなりシビアです。

潤沢な予算や制作期間は望むべくもありません。

TVシリーズなら、なおさらです。

限られた予算、スケジュールの中で、多くのスタッフの献身的な努力のおかげで、奇跡のような素晴らしいフィルムが作られているのです。


では、

そんな現場で望まれているのはどういう絵コンテか。


一言で言うと「低カロリーで見栄えの良いフィルム」が出来る絵コンテです。

作画や3Dなど手作業部分のカロリーが低く、かつ予算を低く抑えつつも、演出が優れていて、見栄えがよいフィルムになる絵コンテ、ということです。


簡単に言ってますけど、これが完璧にこなせれば苦労しないわけで。

やっぱり自分の思い描いた「理想形」の映像に近づけようとすると、カロリーが高くなったり、カット数が多くなったり、尺が大幅オーバーしちゃったりします。


正直、絵コンテを切っていると1カットたりとも無駄なカットはない、全てのカットが必要かつ素晴らしい画面だと錯覚してしまいます。

ま、錯覚しないとマズいわけですが。※


いろいろと「大幅オーバー」な絵コンテは、様々な部分がカット(この場合、削除の方)されていきます。

我が子のように愛おしい作品(絵コンテ)をズタズタにされないためにも、必要最小限で監督の必要とするものを満たし、カットされない絵コンテを切る技術を磨きましょう。



次回は、作画枚数やカロリーに関連する「山場」について、です。


では、また。



博多



後の回で改めて説明します。

2021年6月30日水曜日

『絵コンテを切る!!』第4回

ども、博多です。



シナリオはちゃんと読み込まないとダメって話の続きです。



絵コンテの最初の作業はなんでしょう?


「実作業」としては「コンテ打ち(合わせ)」になります。

コンテ打ちとは、監督から作品の設定、キャラクターの性格や関係性、ストーリーの流れなどを聞いたりして、コンテの方向性を確認、擦り合わせしていく作業です。

ここで作品の全体像が把握出来ないと、トンデモコンテを切ってしまいます。


2回で書いたように、作品の中の「基準」「良し悪し」「是非」を決めるのは監督です。

監督の求めるコンテを切れないコンテマンは使ってもらえません。修正が大変ですからね。


商業アニメの絵コンテを切る上で、「コンテ打ち」が実は一番大事な時間だと言えます。

監督に直に質問したり、意見を言えたりするし、こちらの意図を事前に伝えて確認出来たりします。

ここで密にコミュニケーションを取っておくことで、「ズレたコンテ」を切るのを回避出来ます。



ただし!


それには「コンテ打ち」の段階ですでに、自分の描きたいコンテがある程度固まっている必要があります。

ぼんやりと形が見えている状態で話をするのと、まだ何もない状態で話をするのでは全然違います。


演出処理をやっている時に、作打ち(作画打ち合わせ)でコンテをしっかり読み込んで来るアニメーターと全く読まずにいきなり打ち合わせしちゃうアニメーターでは全然上がりが違う、みたいなことですよ。

……て、業界の話で例えられても!(セルフツッコミ)


料理しようとする時に、何を作るかを決めてから作り出さないと迷走しちゃう感じ?

とりあえず、鍋に豚肉、ジャガイモ、人参、玉ねぎ入れて作り出したけど、カレーにもシチューにも肉じゃがにもなっちゃうゾ、的な……(合ってるか、この例え?)。



……まあ、とにかく(汗)。


「コンテ打ち」時点で監督にこちらから確認の質問や、やりたいことの提案などが出来るくらいまでがっつりシナリオを読み込んでおくことが肝要ということです。

なので、最初の質問の答えとしては、「もらったシナリオに目を通して、コンテの輪郭を描いておく」です。


シナリオを読み込んだ上での「コンテ打ち」はとてもスムーズに進みます。当たり前ですが。

監督に、こと細かに説明していただくのが申し訳ないくらい。


ずっと関わっているシリーズ物や、気心知れている(こちらの上がり具合を分かっている)監督だと、その時間はどんどん短くなっていきます。

コンテ打ちの時間は大抵2時間くらいで想定されてますが、実質30分雑談1時間半なんてことも結構あります。

……というか、最近そんなのばっかだな。



何をするにも下準備が大事ということですね。

下準備さえしっかり出来ていれば、その仕事の半分は終わってると言っていいでしょう。


理想中の理想は、コンテ打ちの時点で切るコンテが固まっていて、あとはアウトプットだけという状態ですね。

そうなると、2週間でコンテ切れます。マジで。


なので、

制作の皆さん、なるべく早めにシナリオください。前後話数のシナリオも。



次回は、シナリオを読み込んだ後の話。


では、また。




博多


2021年6月24日木曜日

『絵コンテを切る!!』第3回

 ども、博多です。


OK」なコンテとはどんなコンテか。


私はシリーズの監督は未経験なので、あくまでも知り合いの監督の話などから推察するに、


シナリオの「核」を押さえつつ、キチンと「山場」があって、退屈じゃないコンテ


ではなかろうかと。

自分で言っててナンなんですが、文字で書くと簡単に見えるけど、切ろうと思うと途方に暮れるヤツですね。


まず、「退屈じゃないコンテ」が難しい。

退屈かどうかは個人の主観だし、見てる時の精神状態や環境にも因るし。

ま、正常な精神状態で、まともに作品を見ようとしてくれている人が退屈しない、と定義すれば、なんとなくクリアできそうではありますが……


というか、問題はそこじゃなくて。



今回は「シナリオの「核」を押さえつつ」の部分です。


商業アニメのコンテはまず「シナリオありき」です。

シナリオがないとコンテは切れません。


過去に一度だけ、シナリオなしで原作マンガからいきなりコンテ切ったことありますけど(余談)。


受け取ったシナリオを絵コンテにするわけですが、コンテを書き出す前にどのくらい読み込んだかでコンテの出来不出来が大きく変わってきます。

当然ですが、がっちりシナリオを読み込んだ方が出来はよくなります。

シナリオをどう読み取るかで、コンテの方向性が変わったりもします。


私の「大師匠」である芦田豊雄は「シナリオを何回も繰り返し読んで、勝手に自分の中で映像が流れるようになるまで読め。そこまで来たら、その映像を絵コンテにしろ」と言いました。※

つまり、いちいちシナリオを読みながらでないと映像が浮かんで来ないうちは、まだ絵コンテを書き出す段階じゃないのだと。

なるほど。

そして、その言葉に従い、絵コンテを切り続けてきた結果が、今の私の立ち位置です。

……やっぱ、大師匠はスゴいなあ(崇拝)。


今後もちょくちょく、大師匠の教えが出てきます。お楽しみに。


ちなみに、私の絵コンテデビューはその大師匠が監督を務める作品だったんですが、残念ながらとある事情により日の目を見ませんでした。

めちゃくちゃ面白い作品になりそうだったのになあ! 残念!!



……で、

シナリオを読み込むことが大事って話。

次回に続きます。


では、また。



博多



「大師匠」は芦田豊雄ですが、それ以外にも「お師匠様」は何人もいらっしゃいます。

2021年6月17日木曜日

『絵コンテを切る!!』第2回

ども、博多です。


いきなりですが質問です。

なぜ、あなたは「絵コンテを切ろう」と思ったんでしょうか?


カッチ、カッチ、カッチ……



はーい!

「自分の思い通りに映像を作りたいから!」とか答えた人ー!


回れ右して自主制作アニメでも作っててください。


私の絵コンテ講座はあくまでも「商業アニメの世界で喰っていくため」のものです。

そういうことは教えられません。

というか、私が知りたいくらいです。



商業アニメの世界はそんな甘くありません。

まず「視聴者」と「クライアント」ありきです。

現場においては監督、そしてクライアント(この場合、出資者)が言うことが絶対です。


間違っても、自分の思い通りの映像を作れるとか思わないように。


自分の切った絵コンテが、監督チェック後にガラッと変わってる、なんてことは珍しくありません。特に絵コンテを切り始めた頃は。

そんな時でも「努めて」平常心で受け入れられる準備をしておきましょう。


自分がいくらカッコいい、面白いと思っていても、それが監督やクライアントに響かないようであれば、それは「NG」なのです。

自分が「監督であり出資者」ではない限り、「こうした方が絶対いい!」はありえません。


そして、最初にぶつかる壁がここにあります。


思わぬNGや修正を食らって、モチベーションが激落ちくんすることが必ずあります。

クリエイティブな仕事には付きものですが、1ヶ月掛けてせっせこせっせこ書いたものを否定された時のダメージはかなりデカイです。


「私は面白いと思ったのに……わからん人だな」などとブツクサ言いたくなる気持ちも分からなくもないですが、絵コンテマンはあくまでも絵コンテを切るだけあって、映像全ての「責任を取る」役職ではないことをわきまえましょう。


監督は映像全ての「責任を取る」役職なので、作品が面白かったら賞賛を浴びますが、一方で、つまらなかった場合は批判を一身に浴びる立場にあります。

つまり「責任を取る」代わりに、映像全般に関わる全ての役職の上に立って指示を出しているわけです。

その監督が「NO」と言ったら「NO」なのです。


TVシリーズであれば、自分の担当話数以外の話も全て踏まえた上で監督は判断しています。

過去話数、先の話数と並べた時に矛盾がないか、突出してヘンではないか「そんなキャラじゃないだろ」とか、いろいろな要素で見ています。

スポット参戦した絵コンテマンには見えない、分からないことは山のようにあるのです。


なので、

趣味趣向は一旦忘れましょう。

自分を殺して、シナリオに書かれたことを監督の指示通りに絵コンテにすることに専念してください。


じゃあ、自分の思い通りのコンテが書けないのか、というとそうではありません。

自分の思い通りのコンテがキチッと作品の中に収まっていればいいだけの話です。


孔子もおっしゃっています。

「七十而從心所欲、不踰矩。(七十にして心の欲する所に従えども矩(のり)を踰(こ)えず)」。





……はい?(自分でツッコむスタイル)





要は、

積極的にどういう作品であるかを理解することに努めて、自分が思い描く映像の完成形がその作品に則すようになればいいのです。

その為には、しっかりシナリオを読み込まなくてはいけないのですが。




ということで、次回に続きます。


では、また。




博多


2021年6月12日土曜日

『絵コンテを切る!!』第1回

 ども、博多です。


やると決めたからにはやります!


50過ぎて、後進もそれなりに出来て、アニメ業界で様々な経験をしながら生きてきた中で、何かしら形になるものを残したいと思うようになりました。

自分の中で誇れるものは何かと訊かれたら、多分「絵コンテを切ること」と答えるでしょう。


なので、

僭越ながら……誰に頼まれたわけでもないですが、「絵コンテ講座」をやりたいと思います。


ワーイ! ドンドン、パフパフ!


で、

講座のタイトルとしては、上を見ていただくと分かる通り、『絵コンテを切る!!』です。


『絵コンテを切ろう!』とか『切ってみよう!』じゃありません。

『切る!!』です。

これは「絵コンテで飯を喰っていく」覚悟というか決意というか、能動的な意思をもって臨んでほしいという気持ちを込めてのことです。


前回、前々回も書きましたが、30分番組1本分の絵コンテというのは、なかなかのボリュームです。

絵コンテを切ったことがない人には未曾有の物量と言えます。


最初は、切っても切っても終わる気がしません。マジで(真顔)。


その上、さまざまな制約や予測不能なアクシデントが襲ってきます……設定がないとか設定がないとか設定がないとか。


商業アニメーションの世界で「ちゃんと絵コンテを切り続ける」ことは生半可な覚悟では務まらないということです。

逆に、務まる人間が少ないので、仕事にあぶれないとも言えます。



じゃ、本題。

以下、予定してるレジュメ(備忘録ともいう)。



下準備

・心構え

・シナリオを「ちゃんと」読む

・山場どこ?

・シーン分け

・香盤表作成

・サムネ作成


コンテを切る

・ホウレンソウ

・描き過ぎない

・コンテに必要な情報

・何のためのカットか

・「俺って天才じゃね?」




これ見てわくわくした人は是非読んでください。


では、また。




博多

2021年6月9日水曜日

『大前説』の件 その3

ども、博多です。

1ヶ月で30分番組の絵コンテ1本を切る」話の続きです。

120枚の絵コンテを1ヶ月で書くには、14枚以上書かなくてはならない。

……のですが、あくまでも、それはシナリオ1本分を絵コンテにするとそのくらいになるよ、という結果論的な数字です。
実際に書いてみると、その1ヶ月の中で1枚も書かない日もあれば、1020枚書く日もあります。
作業インから1ヶ月間ずっと毎日同じ枚数書き続ける、などということはありません。

15枚書ければ1ヶ月で切れるわい」と早合点しないでください。
120枚オーバーの絵コンテもちょいちょいあります。
15枚でも間に合わない場合も出てきます。ケースバイケースです。

肝心なのは、常にスケジュールを意識して「日産で枚書けばアップに間に合う」という気持ちを持ち続けることです。
毎日、残り予定枚数を残り日数で割って、その日のノルマをクリアしていくことが大事なのです。

これが、「締め切りを守るコツ」です。
と、まあ、当たり前のことしか言ってないんですけどね……


で、
コツコツと締め切りを守り、それなりに使えるコンテを切り続けていれば、制作スタッフ、監督からの覚えがよくなっていって、「また、あの人に絵コンテを頼んでみよう」と思ってくれるようになります。
そうやって、仕事の途切れにくい絵コンテマンになれるというわけです。





さてと。
漠然としたお話はこのくらいにしましょうか。


次回から「アニメ業界で食っていける、実践的絵コンテ講座」をやりたいと思います。
私が普段、絵コンテを切る際に実践していることを「つまびらか」にします。

お楽しみに。

では、また。


博多

2021年6月5日土曜日

『大前説』の件 その2

ども、博多です。


1ヶ月で30分番組の絵コンテ1本を切る」のが大変って話です。


30分番組とは言いますが、実のところOPEDCMなどを除くと、本編尺は20分前後です。

秒数に直すと長いもので1280秒くらい、短いものだと1180秒とかです。


とはいえ、です。

1200秒の絵コンテとはどれほどの物量か。


近年の標準的な30分枠のTVアニメのカット数はおよそ300カット前後です。

アクション多めの作品やリアルなスポーツ物だと、350カットから400カットを超えるものもあるでしょう。

会話劇主体、長回しOKな作風だと250カットを切るものもあったりします。

ピンキリでカット数はだいぶ前後しますが、そのくらいのボリュームです。


ところで、

基本的にコンテ用紙のコマ数は5コマです。



単純に300カットを1コマずつ埋めていったとして60枚は必要になります。

でも、そんなコンテ、見たことありません。


カットの中には、動きがあったり、カメラワークがあったり、1コマに収まらない長ゼリフがあったりします。


全カットすべて行儀よく1コマで収まったりしないのです。


私の経験を基にざっくり平均すると、30分番組1本分の絵コンテに必要な用紙は120枚前後。


先ほど述べた通り、作品によってカット数や、カット内容による必要なコマ数の多少はあるので、多い時は150枚以上、少ない時は100枚行かないこともあったりします。

もちろん同じ内容であっても、人ぞれぞれ、書き方によっては枚数が増減します。

字が大きくて、少し長いセリフになると1コマに収まらないとか、シーン変えのカットは必ず別の紙に移るとか。(これ、私)。


じゃあ、120枚としましょう。

120枚の絵コンテを1ヶ月で書くとなると、単純計算で毎日4枚書き続けないと終わりません。

日曜に休むことを考えると、4枚以上書かなければ終わりません。



あなたは書けますか?



……この話、続きます。



では、また。



博多




ちなみに調べてみたら、私が今まで切った中で1番多かったのは「183枚」でした。

366カット、1349……尺大幅オーバー(笑)。


2021年5月30日日曜日

『大前説』の件

ども、博多です。


2007年から絵コンテの仕事を始めたので、今年で14年になります。

日の目を見なかった作品や海外のクレジットされてない作品なども合わせると、30分番組の絵コンテだけでも200本以上は絵コンテを切ったハズです、多分。※

14年間、ありがたいことにそれなりに仕事は繋がっていて、まるまる1ヶ月以上仕事が途切れたことはほどんどありません。(ないわけではない)


自分なりの分析ですが、それには明確に理由があって、基本的に「納期を守る」からだと思ってます。


は? 当たり前じゃん。


って思うでしょ?


でも、この業界ではその当たり前のことがなんと「ウリ」になるんですねえ。

なぜかというと、「納期を守れない人が圧倒的に多い」から。

「納期を守る」ということを続けるだけで、基本的には仕事は繋がります。

よほど、使い物にならない、ド酷い絵コンテでも切らない限りは。


なぜでしょう。


答えは簡単です。

アニメーションの制作は基本的に「納期」(この場合、フィルムの納品日)から逆算して、各セクションのスケジュールが組まれています。

その中にはスケジュールが読めない、あるいは読みづらい工程が山のようにあります。

特に近年は、各スタッフが複数の作品を掛け持ちするのが当たり前なので、それぞれの作品のスケジュールがぶつかったり食い合ったりして、作業期間が見えないセクションが多い。

制作スタッフとしては、なるべく前倒しでスケジュールを走らせておいて、時間的な余裕が欲しいわけです。


で。

「絵コンテ」はシナリオの次の工程にあたります。

絵コンテが上がると「演出打ち合わせ」があり、その後ようやく各セクションの「打ち合わせ」が始まり、現場が動き出すのです。

なので、絵コンテの遅れはそのまま「最初の」現場の遅れに直結します。

それ以前にシナリオ上がってこない、とかいう場合もありますが。


絵コンテがスケジュール通りに上がってくるということは、制作スタッフからすると「順調なスタートを切れる」ことを意味します。

それ故、スケジュールを守るコンテマンは重宝される、と言えるわけです。


もちろん、絵コンテの「質」で信用を得ている人もいます。

でも、それは別の話。


で、私の場合。

30分番組の絵コンテであれば、よほどキツイ内容(登場人物が愕然とするほど多いとか、場所+シーン変えが異常に多いとか)でない限り、1ヶ月以内で切ることを心掛けてます。

もちろん、演出処理をやりながら、です。

言い方を変えると、最低限毎月コンテ1本分くらいのギャラを稼ぐ、ということです。


この、「1ヶ月で30分番組1本の絵コンテを切る」ことがどれだけ大変か、という話。


次回に続きます。


では、また。



博多



なぜかこの業界では絵コンテを「切る」という言い方をします。言わない人もいるかもしれませんが。


2021年5月22日土曜日

【Tips】付箋一枚で作画用紙を束ねる

ども、博多です。


演出処理を始めて2〜3年目に編み出した小技を紹介します。



作画用紙のタップ穴に
粘着面を下手前側にして、付箋を通します。
上端は紙と揃えておきます。
付箋を折って
(裏側から見たところ)
そのままクルッと回して、タップ穴から再び表に出します。
出てきた付箋は下側が粘着面なので、
そのまま貼って出来上がりです。


横から見るとこんな感じです。↓





結構カチッと止まりますし、20枚くらいまではいけます。
付箋の幅は15ミリのものがぴったりハマります。


私と同じように、作業中に思いつく人も多いと思うのですが、同じ留め方をしている人を今までに一人しか見たことないので、意外にマイナーな留め方かもしれません。


「自分で思いついた」というのが秘かな自慢です。えっへん。


では、また。



博多




2021年5月12日水曜日

あにれくのあぶく:ヤマト 2021年5月12日

良く絵コンテや演出の作業をしていると一番参考にしていた本はと聞かれます。 

 これが一番だと作品制作の価値観を一つにすれば表現も限定されますしあまりオススメしませんが、とは言え今まで長く使って一冊ボロボロになって分解してしまい、数年前に買い替えた本があります。

 王立宇宙軍制作記録集と言う本です。 

 自分が動画をやっていた30年近く前に先輩から進められて購入した本。
内容としてもこの作品は明確なコンテが存在せずに打ち合わせでメモ的なものから作画発注されたと聞いており、本の中にはレイアウトや資料が大量に表記されています。


アニメイトショップなどで購入しましたが ちょっとだけ古い本だから最近は中古購入かも知れませんがオススメの一冊です。

 ヤマトナオミチ

2021年5月6日木曜日

『流し見できない』案件

ども、博多です。


映像制作に携わっている身としては、普段から映画だのドラマだのよく観ています。

それは実益を兼ねた趣味でもあり、趣味が高じて仕事につながっているとも言えます。


なので、

現在はVOD(動画配信サービス)を3つほど契約していて、新たに円盤(パッケージ版のDVD、BD)を買ったりレンタルビデオ屋に走ったりせずとも、それなりに映画ドラマ、バラエティ、ドキュメンタリーなどなど見放題な毎日なわけです。


とはいえ、ひねもす&よもすがら、ずーっと観てるわけにはいきません。

仕事がありますんでね。仕事が。(強調)


で、まあ、

こういう仕事……つまり演出処理や絵コンテを描いたりしていると、割と単調な作業が続く時間帯があります。

完全に流れ作業、頭使わなくても勝手に体が動いてくれる作業です。


そんな時!

ノートPC(MacBookだけどね!)で思わず、映画やらドラマやらアニメやらを流しながら仕事しちゃうじゃないですか。

時間の有効活用ってやつ?

頭使わない仕事だから観れるかなって。


……でも、出来ないんですねえ。両立。


観入っちゃう。

ガッツリ観ちゃう。

ちゃんと観ないと気が済まない。

もっと言うと、失礼な気がしちゃう。


なので、「そっとじ」です。


そうやって、私の「お気に入り」はどんどんドンドン増えていって、今や死ぬまでに全部観切れる気がしないくらいパンパンに膨らんでおります。


しかも、新作配信されたら「お気に入り」そっちのけで観ちゃったりしてるので、全然減っていく気配もないっていうね。



VODあるあるですね。



ちなみに、

そんな仕事中にはバラエティ番組やトーク主体のYoutube(主にオカルト系)なんかを「聞いて」ます。



……あ、もちろん、好きな作品は円盤買ってますよ(何のフォローか?)



では、また。




博多

2021年5月1日土曜日

『いよいよ大台に乗ってきた』件 その3

 ども、博多です。


いつまでも新人気分で仕事できないって話の続きです。



で、まあ、

それなりに作品数も増えてきて、演出家として10年以上のキャリアを積んでくると、当然のように後進もできてくるわけです。

その人たちからすると、私も一応先達ということになって、あれこれ相談されたり話を聞いてくれたりします。

思ってるかどうかは知りませんが、「すごいですね」だの「なるほど。勉強になります」だの気持ち良い言葉をかけてくれたりするわけです。

思ってるかどうかは知りませんが。


こうなってくると、いつまでも「駆け出しのペーペー気分」でやってられません。

相談されたらそれなりに経験を基にアドバイスしたり、自分の体験談などを話して仕事の参考にしてもらったり、「お手本」とならなければいけない。

これが私の性分だと、とにかく「後ろめたい」。


「お手本」になれるほどの技術はあるのか。

経験を積んだのか。

人間としてどうなんだ。

そもそも、お前にはできているのか。

今もし同じ状況になったらお前もそうなるんじゃないか。


という想いがグルグルぐるぐる渦巻くわけです。


と、

ここで一つの金言があります。


「心に棚を作れ!」(BY 島本和彦)


とりあえず、そういう想いは一旦棚に上げ、自分ができてるかどうかは別にして、指標を言葉で示すことはできます。

できてないことは言葉にしてはいけない、わけじゃない。

それによって、後進が救われるのであれば、いいじゃないか。


そんな風に割り切って、近年は話をすることにしています。

常に心の中でツッコミを入れながら。


「お前が言うな」




では、また。



博多