2015年6月21日に開催された『第2回 神志那弘志の実践パース講座』の際、事前に受講者に予習を促す意味で掲載した『神志那弘志の実践パース講座 ~初級編~』を再掲載いたします。
これからアニメーターを目指したい、本格的に絵を描く練習をしたい、という方は是非一読してみてください。
パースは「知識」です。
知っていればどんな物でも正確に描けるようになりますし、知らないといつまで経っても漠然とした絵しか描けません。
英語で「perspective(パースペクティブ)」と言われるパースは「線遠近法」「透視図法」とも言い、遠近感を表現する絵の技法のひとつです。
周りの黒枠はフレームだと思ってください。
図1の、中央に引かれた横線は「アイ・レベル=E.L(Eye Level)」です。
これはカメラの高さを示すものであり、地面に垂直にカメラが立っていた場合の水平線(地平線)のラインでもあります。
中央の点「消失点=V.P(Vanishing Point)」から斜め下に伸びている2本の線を道だと思って見てください。
道が消失点(V.P)に向かって収束しています。
このように、遠くにいくほど対象物を小さく(狭く)描くことで、遠近感を表現するのが「パース」です。
図2は二つの直方体が置かれている状態です。
パースは厳密に言えば、全て「三点透視」で描かれるべきですが、カメラの画角や対象物のサイズ、対象物との距離などにより「二点透視」で描く場合も多いです。
特に、アニメーションの現場では「二点透視」で描かれる場合が多いと思います。
左の直方体Aは「二点透視」で描かれています。
直方体Aの左側の面はV.P1へ、右側の面はV.P2に向かって収束していきます。
右の直方体Bは「一点透視」で描かれています。
右側の面がカメラに正対しており、その消失点がカメラの真横に位置することになるため、上下の線を平行に描いてもおかしくない、という解釈です。
左の面はカメラの向きと平行に伸びていくため、「フレーム中央の消失点(V.P)=カメラの消失点」に向かって収束いくことになります。
ただし、「一点透視の絵」は対象がカメラと正対しているという、特殊なケースだと思ってください。
基本はあくまでも「二点透視」または「三点透視」です。
また、カメラの高さであるE.Lはその画を構成する高さの基準となります。
直方体AとBが地面に置かれていた場合、E.L部分が同じ高さですので、直方体Aに比べてBはかなり大きいことが見た目で分かります。
図3が「三点透視」です。
左右の面がそれぞれ水平に、E.L上のV.P1、V.P2へ収束していますが、さらに上方のV.P3に向かっても収束しています。
高層ビルなどを見上げた時の事を想像してみてください。
実際には、上方の小さなフレームのような画になるケースが多いです。
広角のレンズで捉えるとこのような画もあり得ます。
ただ、三つの消失点(V.P)が全てフレームに収まることは、そうそうないと思いますが。
「三点透視」の絵を見て分かるように、必ずしも消失点(V.P)がE.L上にあるとは限りません。
図4のように、E.L上に消失点(V.P)を持たない立体もあり得ます。
「消失点はアイ・レベル(水平線)上に存在する」というのは、初心者が陥りやすい思い込みです。
画面内に存在する物それぞれに、無数の消失点(V.P)があるということです。
『実践パース講座 ~初級編~』は以上です。
これは基礎中の基礎であり、実際の『実践パース講座』ではこのことを理解した上で、さらに踏み込んだ内容で講義が行われました。
「あにれく」の講座は、主に現場で即役立つ実践的な内容のものです。
最後に行われたのは、コロナ禍直前の2019年12月15日に開催された『宇田明彦の作画入門講座(原画の作法編)』となります。
あにれくでは今後、情勢が安定し次第、講座を再開しようと考えています。
現在はそのタイミングと内容を、慎重に探っている状態です。
スキルアップを目指したい方、アニメーションの制作に興味がある方は是非、期待してお待ちください。