2021年8月3日火曜日

『絵コンテを切る‼︎』第7回

 ども、博多です。


前回の続きです。


頭の中で描いた「完全なる理想形」の映像を絵コンテに落とし込む時には、ある程度「現場のキャパシティ」を想定しないといけません。

ずっと動きっぱなしというわけにはいかないし、止め絵だけのフィルムなんてのもあり得ません。

やはりメリハリが大事です。


となると、前回定義した「山場」をどこに設定するか肝(キモ)になってきます。

大抵の場合、シナリオには「起」「承」「転」「結」があります。

その中で「起」と「転」の部分が「山場」になることが多いです。


「起」はつかみの部分。

最初に思い切り動かしておいて、「動いているフィルム」を印象付ける。

スポーツアニメなどで、私がよく使う手です。


「転」は話が盛り上がって来て、ラストのオチつまり「結」の直前です。

ラストに向けてお膳立てが揃って、あとはコトをなすだけ、みたいな状況。

「話は終わった。さあ、おっ始めようか」となって、あとはもうそのアクションを起こすだけ、みたいなところでド派手に動かす。

それこそ文字通りの「山場」でもあります。



そのコンテでの「山場」が決まったら、あとはそこに向かって徐々に盛り上げていきます。

これはシナリオの話ではなくて、画面的なテンションという意味です。


私は「平場」という言い方をするんですが、会話が続くだけだったり、何気ない日常描写、特に大きなアクションもなく、1カットあたりの秒数が長い状況が続くようなシーン……つまり「山場」ではないところで「山場」以外の尺を埋めていくわけですが、そこでも徐々にテンションを上げていき、「山場」に入る準備をしておくわけです。


私は、この「平場」と「山場」の割合は「73」から「82」くらいが妥当と考えます。

印象としては「基本平場で少しだけ山場がある」。

もちろん、話にもよりますけど。


なぜ「山場はちょっとだけ」がいいかと言うと、「山場」が多いと疲れるからです。

「緊張疲れ」というか、驚きが薄くなるんですよね。


「山場」「平場」という言葉でいうなら、ずっと続く「山場」はもう山場ではなく、単に高いところにある「平場」なんです。

「山場」の高さ(この場合、画面のテンション)を強調するためには、そうじゃない低いところをたっぷり用意しないといけない、ということです。


これを見誤ると「ただひたすらテンションが高い、何がいいたいのか分からないフィルム」が出来上がります。



前回も言いましたが、「山場」は視聴者の情報処置の効率が落ちるところです。

なので、「平場」が話の聞かせどころになります。

設定やストーリーが複雑な作品ほど「平場」が重要と言えます。


で、この「平場」をいかに飽きさせず見せ続けられるか、がコンテマンの腕の見せどころでもあるわけです。


派手なシーンに目が行きがちですが、本当に上手いコンテとは平場を平場と感じさせない、さりげないアングル選びやカット割りの技術が優れているのです。



「山場」の話、もうちょっと続きます。


では、また。



博多