ども、博多です。
前回の続きです。
頭の中で描いた「完全なる理想形」の映像を絵コンテに落とし込む時には、ある程度「現場のキャパシティ」を想定しないといけません。
ずっと動きっぱなしというわけにはいかないし、止め絵だけのフィルムなんてのもあり得ません。
やはりメリハリが大事です。
となると、前回定義した「山場」をどこに設定するか肝(キモ)になってきます。
大抵の場合、シナリオには「起」「承」「転」「結」があります。
その中で「起」と「転」の部分が「山場」になることが多いです。
「起」はつかみの部分。
最初に思い切り動かしておいて、「動いているフィルム」を印象付ける。
スポーツアニメなどで、私がよく使う手です。
「転」は話が盛り上がって来て、ラストのオチつまり「結」の直前です。
ラストに向けてお膳立てが揃って、あとはコトをなすだけ、みたいな状況。
「話は終わった。さあ、おっ始めようか」となって、あとはもうそのアクションを起こすだけ、みたいなところでド派手に動かす。
それこそ文字通りの「山場」でもあります。
そのコンテでの「山場」が決まったら、あとはそこに向かって徐々に盛り上げていきます。
これはシナリオの話ではなくて、画面的なテンションという意味です。
私は「平場」という言い方をするんですが、会話が続くだけだったり、何気ない日常描写、特に大きなアクションもなく、1カットあたりの秒数が長い状況が続くようなシーン……つまり「山場」ではないところで「山場」以外の尺を埋めていくわけですが、そこでも徐々にテンションを上げていき、「山場」に入る準備をしておくわけです。
私は、この「平場」と「山場」の割合は「7:3」から「8:2」くらいが妥当と考えます。
印象としては「基本平場で少しだけ山場がある」。
もちろん、話にもよりますけど。
なぜ「山場はちょっとだけ」がいいかと言うと、「山場」が多いと疲れるからです。
「緊張疲れ」というか、驚きが薄くなるんですよね。
「山場」「平場」という言葉でいうなら、ずっと続く「山場」はもう山場ではなく、単に高いところにある「平場」なんです。
「山場」の高さ(この場合、画面のテンション)を強調するためには、そうじゃない低いところをたっぷり用意しないといけない、ということです。
これを見誤ると「ただひたすらテンションが高い、何がいいたいのか分からないフィルム」が出来上がります。
前回も言いましたが、「山場」は視聴者の情報処置の効率が落ちるところです。
なので、「平場」が話の聞かせどころになります。
設定やストーリーが複雑な作品ほど「平場」が重要と言えます。
で、この「平場」をいかに飽きさせず見せ続けられるか、がコンテマンの腕の見せどころでもあるわけです。
派手なシーンに目が行きがちですが、本当に上手いコンテとは平場を平場と感じさせない、さりげないアングル選びやカット割りの技術が優れているのです。
「山場」の話、もうちょっと続きます。
では、また。
博多