まだまだ秋というには暑い日曜の午後、今回はアニメーション演出の経験豊富な本郷みつる監督を講師にお招きするということで、さまざまな現場でアニメの演出に携わる皆様がお集まり下さいました。今回は欠席、遅刻の方も少なく、始まる前から会場の期待と熱気が感じられました。
司会による簡単な説明の後、早速本郷みつる氏のお話が始まりました。浪曲がお好きだというお言葉通り、見事な口跡で話しぶりに引き込まれて聞き入ってしまいました。
まず最初に、演出とは正解がないものを探っていく仕事であり、自分がこれから語るのはあくまでも自分が思っている演出法であるとの導入から、日本のアニメーションの歴史をご自身の体験と絡めてお話頂きました。TVアニメーション初期のフォーマットが今も通用していること、当時の現場状況、その中で本郷さんご自身が先輩方から学んだこと、など学びになることが沢山ありました。特に作打ちの方法に関しては、非常に実践的で自分も参考にしたいと思いました。
講座の中で本郷さんが折に触れ強調されたのは、現場で生き残るためのアドバイスでした。どの現場でも人間関係で揉めるものなので、フリーであっても自分で現場の環境を良くする努力をすること、大勢でモノづくりをするのだから、天才もいるけど努力型もいていい、出来ないことはできないので、折れる前に逃げていい、自分だけで抱えず、話せる相手を作る、などのお言葉は、現場の後輩たちに向けての本郷さんの優しさを感じました。
そうした現実に即した上で、「面白くする方法」をどれだけ見つけられるか、描ける人材が足りなければ、「他の人がやらない、枚数がかからないけれど面白い絵作りができないか?」考えるのが演出の仕事であることを、実例を上げながらご説明頂きました。
では「面白くする」ために、何をすべきか?演出は「出す」仕事なのでインプットを沢山して刺激を受けることが必要であることを本郷氏は強調されました。面白いもの、何か引っかかるものを見て、自分なりの「リアル」を見つける、自分が何を作りたいのか考え続ける、自分なりのこだわりを持つことが大切であり、そのために、一番は読書、映画を観ることだと語られました。特に読書は、文字を追う力を鍛える、変なことを思いつくことに役立ったとのことでした。
後半はさらに具体的に、脚本から絵コンテを作成していく過程での考え方について、またそれに伴いアニメーション上での「芝居」「間」のコントロールについてお話いただきました。特にコンテマンに求められることとして、「面白くするための選択肢はコンテマンに任されている。観た人がどんな印象を持つか、ある程度計算できることが大切」とのお言葉が心に残りました。
3時間たっぷりと濃密なお話をいただき、質疑応答に入りました。現役の演出さんばかりが集まっているだけあり、こちらでも非常に濃密かつ具体的な議論が盛り上がり、予定時間を超過して熱の入ったお話を伺うことができました。また、終了後は演出担当者同士の交流が行われ、ご来場のみなさまも大いにこの貴重な機会を利用されていました。
特別講師の本郷みつる様、ご来場いただいた皆様のお陰様で、非常に有意義な講座を開催でき、スタッフ一同も開催までの努力が報われた思いです。みなさま本当にありがとうございました。今後もAniLecはこのようなイベントの開催に努力してまいりますので、これからもよろしくお願い申し上げます。