ども、博多です。
前回は、コンテ打ちまでにシナリオを読み込みましょう、という話をしました。
シナリオが頭に入ったら、何回も反芻してみます。
そうすると、頭の中に映像が浮かんでくるはずです。
実はシナリオを初見で読んだ時からすでに、ある程度画面を頭に思い描きながら読んでいるのですが、それはあくまでもその場面のイメージ……つまりは静止画、またはワンカットだけの映像であって、1本の繋がった映像ではないはずです。
この断片化されたイメージを、頭の中で繰り返し再生しながら、映像として組み立てていく作業を行っていきます。
ちなみに、この作業は完全に頭の中で行なっている作業なので、目に見える形ではありません。
どこまで出来たら終わり、という明確な線引きはないですし、自分の中で「見えた!」と思えば、そこで完了です。
もちろん、その作業中に絵コンテを切り始めることもあると思います。
切り始めても、常に頭の中で上映し続けましょう。
何回も何回も上映して、脳裏に焼き付けておきます。
そして、
そこで出来上がった映像は「完全なる理想形」の映像のはずです。
潤沢な作画枚数により滑らかに動き、作画の崩れも一切ない。
キャラ表よりもちょっとゴージャスに「盛った」絵かもしれません。
さらに美麗な背景、思った通りのところにジャストなタイミングで自在に動き回るカメラ。
まるで「夢のような」映像が出来上がったことでしょう。
これが「目標」になります。
アウトプットする際に、その映像をどれだけ再現出来るか、というのが絵コンテの作業と言ってもいいです。
ここでは敢えて「どれだけ”忠実に”再現出来るか」という言葉は使いません。※
さて、
ここから様々な「引き出し」が必要になります。
「経験値」と言い換えてもいいでしょう。
この映像を、ちゃんと商業アニメの制作体制で再現しようとした時に、どのような手法を使えば最適なのか。
作画のカロリーはどのくらいか。その作品のスタッフで消化できそうか。
定尺の中で収まりそうか。
残念ながら、現在の日本の商業アニメの現場はかなりシビアです。
潤沢な予算や制作期間は望むべくもありません。
TVシリーズなら、なおさらです。
限られた予算、スケジュールの中で、多くのスタッフの献身的な努力のおかげで、奇跡のような素晴らしいフィルムが作られているのです。
では、
そんな現場で望まれているのはどういう絵コンテか。
一言で言うと「低カロリーで見栄えの良いフィルム」が出来る絵コンテです。
作画や3Dなど手作業部分のカロリーが低く、かつ予算を低く抑えつつも、演出が優れていて、見栄えがよいフィルムになる絵コンテ、ということです。
簡単に言ってますけど、これが完璧にこなせれば苦労しないわけで。
やっぱり自分の思い描いた「理想形」の映像に近づけようとすると、カロリーが高くなったり、カット数が多くなったり、尺が大幅オーバーしちゃったりします。
正直、絵コンテを切っていると1カットたりとも無駄なカットはない、全てのカットが必要かつ素晴らしい画面だと錯覚してしまいます。
ま、錯覚しないとマズいわけですが。※
いろいろと「大幅オーバー」な絵コンテは、様々な部分がカット(この場合、削除の方)されていきます。
我が子のように愛おしい作品(絵コンテ)をズタズタにされないためにも、必要最小限で監督の必要とするものを満たし、カットされない絵コンテを切る技術を磨きましょう。
次回は、作画枚数やカロリーに関連する「山場」について、です。
では、また。
博多
※後の回で改めて説明します。